こんにちは!
今回は国際政策提言勉強会第5回で発表した「保護区」について紹介していこうと思います♪
保護区について調べようと思ったきっかけは西表島での世界遺産登録の問題に触れたことでした。詳細は後々アップされるわかわかにっきを参照してください😊
保護区には具体的な定義が存在せず、その内容や対象は様々です。そこで今回は「保護区とは一体何者なのか!?」を知るため、日本の保護区について紹介しようと思います!
概要
日本の保護区には公園や鳥獣保護区、自然環境保全地域、保護林、天然保護地区、保護水面などなど様々なものがあります。
たくさんありすぎてよくわからなくなるので、ここで少し整理しようと思います。
私の見つけた日本の保護区をリストアップしました。ここに挙げたのは国別目標や国別報告書に関連指標として挙げられていた保護区です。これ以外にもたくさんあると思います。
保護区名 | 関連法・条約 | 関連省庁 | 目的 |
自然公園 | 自然公園法 | 環境省 | 風景地の保護と利用 |
鳥獣保護区 | 鳥獣保護管理法 | 環境省 | 鳥獣の保護 |
自然環境保全地域 | 自然環境保全法 | 環境省 | 生物多様性の保全 |
生息地等保護区 | 種の保存法 | 環境省 | 希少種の保護 |
保護林 | 国有林野の管理経営に関する法律 | 林野庁 | 自然環境の維持や動植物の保護 |
緑の回廊 | 国有林野の管理経営に関する法律 | 林野庁 | 生息地分断化の防止 |
保護水面 | 水産資源保護法 | 水産庁 | 持続可能な水産資源の利用 |
協同漁業権区域 | 漁業権 | 水産庁 | 持続可能な水産資源の利用 |
指定海域 | 海洋水産資源開発促進法 | 水産庁 | 持続可能な水産資源の利用 |
沿岸水産資源開発区域 | 海洋水産資源開発促進法 | 水産庁 | 持続可能な水産資源の利用 |
天然保護区域 | 文化財保護法 | 文化庁 | 文化財の保護・保存 |
名勝地 | 文化財保護法 | 文化庁 | 文化財の保護・保存 |
世界遺産登録地域 | 世界遺産条約 | 文化庁 | 文化遺産や自然遺産の保護・保存 |
特別緑地保全地区 | 都市緑地法 | 国土交通省 | 都市の緑地保全・緑化推進 |
近郊緑地保全地区 | 首都圏近郊緑地保全法 | 国土交通省 | 健康・公害・観光資源の保全 |
保安林 | 森林法 | 林野庁 | 主には防災 |
ラムサール条約登録湿地 | ラムサール条約 | 環境省 | 水鳥の生息地である湿地の保護 |
保護区って意外と多いですよね!
省庁の関係が頭に入っているとより理解しやすいかと思います!下の画像を参考にしてみてください(^^♪
それでは、それぞれの保護区について詳しく紹介します!
自然公園
自然公園とは自然公園法に基づき、景観の保護を目的として環境省が設定している保護区です!
ここでいう景観は生態学的な景観のことで、私たちがよくイメージする景色という意味の景観ではなく、様々な生態系の集合体というイメージで、生物同士のかかわりや人や自然との関わりなども含みます。
自然公園には国立公園・国定公園・都道府県立自然公園の3つがあります!皆さんも聞いたことのある名前が出てきたのではないでしょうか?
それぞれの違いは指定・管理者や指定面積などにあり、指定・管理者は国立公園は国が指定・管理両方を行い、国定公園は国が指定し、都道府県が管理を行っています。都道府県立公園は都道府県が指定・管理両方を行っています。
自然公園は国土の約14%(国立公園:約5.8%、国定公園:約3.8%、都道府県立自然公園:約5.1%)を占めていて、保護区の中で最も大きい面積となっています!
指定者 | 管理者 | 面積 | |
国立公園 | 国 | 国 | 約5.8% |
国定公園 | 国 | 都道府県 | 約3.8% |
都道府県立公園 | 都道府県 | 都道府県 | 約5.1% |
自然公園について、国立公園を例に詳しく説明していきます♪
実は日本の国立公園はすべてが公共の場というわけではありません。
国立公園の6割は国有地ですが、全体の4分の1は私有地となっています。日本は狭い土地に多くの人が住んでいるため、私有地を含まないで国立公園を指定するのは難しいのです。そこで日本は地域制自然公園制度という土地の管理権に関係なく自然公園に指定することができる制度を設けています。これによって自然公園指定の促進や、里山のような人の手が程よく入っている場所も指定することができます!
そして、国立公園にはゾーニングというものがあります。ゾーニングとは、指定地域内をさらに規制制度などで分けることをいいます。
ゾーニングをすることで必要に応じた保護対策をすることができ、効果的に保護・管理などを進めることができます。
下の画像は国立公園内のゾーニングの例です。国立公園には陸域と海域があり、陸域では特別地域と普通地域に分けられ、海域では海域公園地区と普通地域に分けられています。
ゾーニングは自然公園法のみならず色々な保護区制度に取り入れられています。
しかし、境界線を実際に引けるわけではなく、わかりづらいことが課題となっています。そのため指定の際には、できるだけ河川や線路などに沿って指定することで、境界線がわかりやすくなるように心がけているようです。
鳥獣保護区
鳥獣保護区は狩猟免許でおなじみの鳥獣保護管理法(正式には、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)に基づき、鳥類や哺乳類の対象種の保護を通して自然環境を保全することを目的とした保護区となっています。こちらも環境省が設定しています。
この保護区では、他の法律によって適切に保護管理されている種や衛生環境に大きな影響を与える種は対象種となりません。具体的にはニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類、いえねずみ類3種は対象外です。
指定には存続期間が設けられており、最大20年間鳥獣保護区に指定することができます。期限を設けることで、随時保護区の見直しを検討することができ、保護区を存続する必要があると判断すれば、再度指定することも可能です。
鳥獣保護区は指定者によって国指定鳥獣保護区と都道府県鳥獣保護区の2つに分けることができます。
国際的または全国的に重要な地域は国指定鳥獣保護区に指定され、それ以外の保護が必要と考えられる地域は都道府県指定鳥獣保護区に指定されます。
そしてそれぞれの鳥獣保護区に、制度の異なる特別保護地区や特別保護指定区域を設けることができます。具体的には鳥獣保護区は狩猟の禁止のみですが、特別保護地区では狩猟の禁止に加え、森林伐採や埋め立てなどの開発行為が許可制となり、規制が少し強くなります。そして、特別保護指定区域では、動植物の採集や焚火、撮影などの行為も加えて許可制となります。
先ほどまでの指定者や制度とは別軸で、指定要因によっても区分することができます。指定要因は森林鳥獣生息地、大規模生息地、集団渡来地、集団繁殖地、希少鳥獣生息地、生息地回廊、身近な鳥獣生息地の7つに分けられます。
森林鳥獣生息地 | 森林に生息する鳥獣の保護を通して、地域の生物多様性の確保にも貢献する地域 |
大規模生息地 | 行動範囲が広い鳥獣やその地域の多様な鳥獣の保護を通して、地域の生物多様性の拠点の確保にも貢献する地域 |
集団渡来地 | 渡り鳥や海生哺乳類の保護のため、干潟や岩礁などの渡来地の必要な地域 |
集団繁殖地 | 集団で繁殖する鳥類、コウモリ類、海生哺乳類の保護のため、樹林、断崖、洞窟などの繁殖地の必要な地域 |
希少鳥獣生息地 | 環境省や都道府県で絶滅危惧種に指定されている鳥獣やそれに値ずる鳥獣の生息地であって、保護の必要のある地域 |
生息地回廊 | 生息地を分断された鳥獣の保護のため、移動経路となっている地域や指定することでその機能を回復できる地域 |
身近な鳥獣生息地 | 市街地やその近郊で、鳥獣の生息地を確保また創出することで、良好な生活環境や自然とのふれあい、環境教育に貢献する地域 |
この7つの指定区分は都道府県指定鳥獣保護区にはすべてありますが、国指定鳥獣保護区には大規模生息地、集団渡来地、集団繁殖地、希少鳥獣生息地(上の図でいう2~5)の4つの指定区分のみとなります。
現在の鳥獣保護区指定状況はこちらからご覧ください。
国指定:国指定鳥獣保護区一覧
都道府県指定:都道府県指定鳥獣保護区の指定等の現況
余談ですが、鳥獣保護法では他にも一定期間の禁猟を定める休猟区や、鉛中毒を引き起こす鉛銃弾の使用が禁止されている指定猟法禁止区域というものもあります。
自然環境保全区域
自然環境保全地域は自然環境保全法や都道府県条例に基づき、自然環境と生物多様性の保全を目的とした保護区で、環境省が設定しています。
環境の保全だけでなく、教育や観光などでの利用も目的としている自然公園とは違い、自然環境保全地域は極力人の手を加えずに後世にこの環境を残すことを目的としています。
自然環境保全地域は大きく分けて原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域、そして新しく沖合海底自然環境保全地域が加わって4つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう!
原生自然環境保全地域は原生の状態を維持している地域で、環境大臣が指定することができます。全域で開発行為は原則禁止とされていて、立入も原則禁止とする立入制限区域も設定することができます。
自然環境保全地域は高山帯や特異な地形・優れた自然環境のある天然林や海域などを指定することができます。こちらも環境大臣が指定することができ、制度によって特別地区、海域特別地区、普通地区にわけることができます。特別地区では開発行為が原則禁止されており、特別地区の中で指定動植物の採集を禁止する野生動植物保護地区を設けることができます。
沖合海底自然環境保全地域は深海(水深200mより深いところ)で特異な生態系を含む自然環境が維持されている地域で、こちらも環境大臣が指定することができます。沖合海底特別地区とそれ以外の地域に分けることができ、沖合海底特別地区では生物の採集や鉱物の採掘などが許可制となっています。
都道府県自然環境保全地域は自然環境保全地域に準ずる地域で、都道府県知事が指定することができます。区分も自然環境保全地域と同じ制度をとっていますが、海域は指定できないため、海域特別地区はありません。
生息地等保護区
生息地等保護区は種の保存法(正式には絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)に基づき、希少種の保護を目的とした保護区で、環境省が設定しています。国内希少野生動植物種のうち採集や捕獲の規制だけでは個体群の存続が危ぶまれ、生息地の保全も必要と判断されたものが指定されます。
管理区域と監視区域の2つに分けられ、繁殖地やえさ場など、特に重要な場所は管理区域に指定されます。管理地区では森林伐採や埋め立て、建築物の建設などの開発行為が原則禁止され、場合によっては立ち入りや餌動植物の捕獲なども禁止しています。監視区域では開発行為は届出制となっています。
環境コンサルタントの方曰はく、種の保存法は調査申請手続きが特に大変らしいです。それだけ厳密に保護されているということですね。
保護林
保護林は国有林野の管理経営に関する法律に基づき、森林の保護管理を通して、自然環境や野生動物、林業、研究に貢献することを目的とした保護区です。指定・管理等には林野庁が関連しています。
保護林は森林生態系保護地域、生物群集保護林、希少個体群保護林の3つに分けられます。
森林生態系保護地域は日本の気候に合った植生の代表的な天然林が指定されており、知床や小笠原など世界遺産に登録されている場所も多いのが特徴です。
生物群集保護林は地域固有の生物群集で構成された森林が指定されており、八ヶ岳や剣山などがあります。
希少個体群保護林は希少生物の生息に必要な森林が指定されており、アマミノクロウサギのいる奄美群島やライチョウのいる火打山周辺などがあります。
緑の回廊
緑の回廊(コリドーともいう)は保護林と同じく国有林野の管理経営に関する法律に基づき、保護林同士をつなぐことで、生息地の分断化を防ぐことを目的とした保護区です。こちらも指定・管理等には林野庁が関連しています。
緑の回廊では広葉樹林や針葉樹林に偏らない、下草のある森林または自然林ならそのままにすることを意識して管理やモニタリングが行われています。
保護水面
保護水面は水産資源保護法に基づき、私たちが利用するマダイなどの水産動植物の保護培養が目的とされていて、都道府県知事または農林水産大臣が水産動植物の増殖に適している水面を指定します。海域の保護区のため管理などには、水産庁が関与しています。
地域によって規制内容は異なりますが、主な内容としては水産動植物の捕獲や一定の漁法が規制されることが多いです。他にも、増殖方法や増殖施設の概要、規制対象種などが定められています。
海域の保護区には他にも指定海域や協同漁業権区域などが存在します。あまり資料が出てこず調べた限りの情報ですが、よかったら下図を参考にしてください💦
これらの海域の保護区で注目してほしい点は、これまで紹介してきた生物多様性の保全を視野に入れた保護区とは少し違い、水産資源の乱獲の防止と保護増殖を通した持続可能な利用に着目している点です。実は日本の海洋保護区は持続可能な利用に着目したものがほとんどなのです。
天然保護区域
天然保護区域は文化財保護法に基づき、天然記念物の保護を目的とした保護区です。指定・管理等には文化庁が関与しています。
ここでは文化財、記念物、天然記念物、天然保護区域という言葉が出てきますが、関係性としては下図の通りです。
天然記念物は記念物のうちの一つで、学術的価値の高い動植物や鉱物や地域が指定されます。
天然記念物には動物・植物・地質鉱物(この3つはそのまま天然記念物と呼ばれる)、天然保護区域の4つがありますが、天然保護区域は植物・動物・地質鉱物の天然記念物に富んだ地域のことを指します。
その中でも特に重要なものが特別天然保護区域に指定され、現在では、天然保護区域全23件のうち4件が特別天然保護区域に指定されています。
特別天然保護区域に指定されると、保存・保護がより強化されます。
文化財保護法も厳格な保護がなされており、調査手続きが大変だと聞きました。
その他保護区
その他保護区を一部紹介します!
名勝地
名勝地も記念物の一つで、指定・管理には文化庁が関与しています。天然記念物は学術的価値でしたが、名勝は芸術・観賞価値の高い記念物を指します。
名勝の一部には山岳や渓谷、砂浜などの自然環境が含まれ保護区として機能することもあります。名勝にも特別名勝というより重要な名勝があり、特別天然記念物と同じく保存・保護が強化されます。
世界遺産
世界遺産は世界遺産条約(正式には世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)に基づき、人類全体の世界の遺産を保存・保護することを目的とし、登録や管理には文化庁が関与しています。世界遺産に登録される場所は他の保護制度で保護されていることがほとんどです。
特別緑地保全地区と近郊緑地保全地区
都市緑地法に基づく特別緑地保全地区や、首都圏近郊緑地保全法に基づく近郊緑地保全地区は国土交通省によって設定され、都市緑地の保護に貢献しています。
保安林
保安林は森林法に基づき、林野庁が指定・管理等に関与しています。保安林は主に防災・減災が目的とされいていますが、生態系保護を目的とした保安林も一部存在します。
ラムサール登録湿地
ラムサール登録湿地はラムサール条約という国際条約によって登録される保護区です。水鳥や湿地の保護を目的とし、登録や管理には環境省が関与しています。
まとめ
今まで挙げた保護区を対象ごとに左が陸地、右が海域、真ん中あたりは両方という感じでまとめてみました。
日本だけでもこんなにたくさんの保護区があるのです。目的は自然環境や生物多様性の保全・保護でなくても、結果的にその機能を果たしている保護区もたくさんありましたね😲
保護区の明確な定義ができないのもなんとなくわかりますね💦
保護区の例を挙げてみて、私は保護区とは何かを保護することを目的としている、または結果的に保護している区域のことを指すのではないかなと思いました。しかし、このままではどこまでを日本の自然環境の保護区に含むのかを定義できないので、定義を明確にすることも必要になってきそうですね。
今回の記事を通して、あなたの中でなんとなく保護区のイメージをつかんで、その多様さを感じることができたなら幸いです♪次回は保護区の愛知目標に対する日本と世界の取り組みについてお話しようと思います。それではまた👋