項目 | 内容 |
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活動名 | 環境省との意見交換会 |
開催場所 | 環境省・オンライン |
開催日時 | 2020/06/25 17:45~18:30 |
6月25日(木)に「コロナ後の経済社会の再設計」をテーマに、環境省の小泉大臣と環境問題や社会問題に取り組む5つのユース団体による意見交換会がありました。
【意見交換に参加した5つのユース団体】
“三密”を防ぐため、各団体から1~2名が環境省で直接提言を行う他、オンラインでも各団体から複数名が参加しました。生物多様性わかものネットワークからは、オフラインで1名、オンラインで3名が参加しました。
わかものネットの提言内容
生物多様性わかものネットワークは、ポスト愛知目標を見据えた「自然共生型社会の構築」し、生物多様性とコロナ危機の関係性を踏まえて「生物多様性の主流化」をより強化すべきであると提言しました。
【提言の主な内容】
- 地方分散型×⾃然共⽣型社会の構築
- 生物多様性に配慮した都市緑化による、都市の⾃然共⽣の実現
- 地⽅への移住支援や国立公園の仕組み改善による、地方の⾃然共生の実現
- 今後コロナ危機を再発しないために
- コロナ危機と生物多様性の繋がりを踏まえ、生物多様性の主流化の促進
環境省に提出した提言書は、以下のボタンからダウンロードすることができます。
以下では、提言の具体的な内容について説明していきます。
地方分散型×⾃然共⽣型社会の構築について
私達が掲げたコロナ後の理想的な社会は、「地方分散型×自然共生型の社会」です。地方分散型の社会を実現させることは、過疎過密問題の解決にも大きく繋がっています。
都市の過密は非衛生的環境でもあり、感染症や災害の際に、都市に大きな被害を引き起こす原因になります。また、過密によって都市内の⾃然環境が著しく減少し、⼈間と⾃然との間で解離が起こるという問題も引き起こしています。
一方、⾃然が豊かな地⽅では、管理不⾜による⾃然環境の荒廃が進んでいます。 このように、過疎過密の問題は、地⽅分散型社会の障壁であると同時に、⾃然共⽣型社会の障壁 にもなっているのです。
地⽅分散型社会の実現のためには、ICT 技術を駆使し、中⼼地に移動しなくても良い仕組み を構築する必要があります。これまで⼤きな障壁となってきた「オンライン化」ですが、コロナ の影響により⼀気に広まっていきました。
この流れを利⽤し地⽅分散型社会を実現し、それに伴って、都市と地方での自然共生型社会の実現を目指していくべきだと考えています。
都市の⾃然共⽣型社会
現在、都市の緑地⾯積が減少傾向にあるという問題があります。東京の緑地面積は、世界の大都市の中でも特に少ないです。一方で、都市緑化を行うことには、⼈々の自然保全意識が向上し、人々が健康な生活を得られるという意義があります。
⼈⼝が過密する都市部から周辺の地⽅へ、地⽅分散により都市の過密が緩和されると、空いた空間を創意⼯夫する余裕 が⽣まれます。その空間を活⽤することで、都市の⾃然共⽣型の社会を実現できると考えます。
例えば、新型コロナウイルスの流⾏を契機に街全体の再設計を行い、エコロジカルネットワークや、地域で保全するべき種等を意識して戦略的 に緑地を設計することで、魅⼒的な都市をつくることができます。
また、⽣物多様性に配慮した「グリーンビルディング」を増加させ、様々な⽣物と市⺠が触れ合える環境をつくることが大切だと考えます。
【環境省への提案】
- 「都市における緑とオープンスペース」の確保のための都市公園等の整備強化
- 国⼟交通省と連携した、「都市の⽣物多様性指標」に基づいた各都市地域の取り組 みに対する更なる⽀援を行い、またエコロジカルネットワークをより普及させること
- ⽣物多様性に配慮をした「グリーンビルディング」を作る⺠間事業者への働きかけの強化
都市緑化の担当である国交省と環境省の強固な連携を行いつつ、生物多様性に配慮した緑地増加を呼びかけることで、都市の自然共生型社会が実現すると考えます。
地方の自然共生型社会
地方では、⾼齢化、⼈⼿の減少等、管理不⾜により荒廃する⾃然が年々増えており、生物多様性が損なわれているという問題があります。
オンラインでの社会活動を実施しつつその地域で⽣活する⼈が増えることで、地産地消の促進や、獣害被害の改善にも繋がると考えます。さらには、地域で⽣活をする⼈々が荒廃する⾃然の整備に関与しやすくなる仕組みができれば、地域の⾃然と共生する社会が築くことができます。
この仕組みの例として、例えば、国立公園の中で保全のボランティアを行うとともに生計をたて、生活ができるような体制をつくることで、保全に取り組みやすくなると考えます。また、国立公園内の林野整備で出た間伐材を再生可能エネルギーに利用し、そのための国立公園の中での雇用を促進するなどの体制があるとよいと考えます。
【環境省への提案】
- 地⽅創⽣に関⼼のある、都市に住む若者に対する活動の⽀援の強化
- 「地域循環共⽣圏」の農村漁村地域での⾃⽴を⽬指し、若者のIターン・Uター ンの増加など、地⽅のもつ豊かな⾃然環境を活⽤できる⼈⼝を増やすための施策 を関係省庁と連携して強化
- 国立公園の中でも保全活動とともに生活ができるような体制づくり、雇用をより促進
今後コロナ危機を再発しないために
新型コロナウイルス感染症は、動物を媒介して発⽣したウイルスであるという説があります。過去に発生した感染症である、SARS や MERS などの感染症の起源は動物性病原体から発⽣したものです。これらの動物から発症とした感染症が広まる理由として、熱帯⾬林などの 森林伐採や野⽣動物の違法取引によって動物から⼈に感染したということが挙げられます。
動物から発症する感染症によるコロナ危機のような影響を防ぐためには、⽣物多様性の保全が⼀つの鍵となります。 感染症を引き起こすウイルス拡散の原因に対処するために、⽇本においても⽣物多様性の保全を意識し た⽣産と消費を⾏うことが⼤切です。
熱帯⾬林の森林を伐採することによって作られた製品、産物を使⽤ しないように企業がサプライチェーンに配慮することや、市⺠が⽣物多様性に配慮して作られた商品を消 費することも重要だと考えます。
【環境省への提案】
- ⽣物多様性に配慮した企業のサプライチェーンを促進
- 市⺠に感染症と⽣物多様性の関係性について環境教育しつつ、⽣物多様性の保全に配慮し た消費を促進
意見交換会での小泉環境大臣からの発言
環境問題や社会問題に取り組むユースからの提言を受け、小泉環境大臣から生物多様性の問題について以下のような発言がありました。
- 環境省にできることは限られている。環境省として出来る限りのことは行うが、他の経済産業省など他の省庁にもユースから提言を行ってほしい。
- 生物多様性の問題は主流化していくべき。環境省の中でも生物多様性について「五箇勉強会」という勉強会を開いているが、五箇先生のようにインパクトのある発信をしていくことは大事。
- 五箇先生は、「生物多様性は地産地消から始まる」と言っている。このような考え方を大事にしていきたい。
最後に
小泉大臣から、生物多様性に対する具体的な施策について話を聞くことはできませんでしたが、「五箇勉強会」の話などから生物多様性問題への関心を伺うことができました。
今回、初めてわかものネットとしての環境省との意見交換会に参加することができました。今後この経験を活かし、生物多様性の問題に対してユースが感じていることをより強く発信していきたいと思います。